098 喧嘩という名のあそび
二人とも小学生だったろうか、姉妹でちょっとした小競り合いをしてた。買い物から帰ってきた母親はそれを見て、買ってきた長ネギで妹の方を叩きだした(なぜネギ?)。テレビの投稿ビデオの一場面。
父親撮影だったのかな?
「きょうだいはケンカしちゃいけないでしょう。仲良くしなきゃいけないでしょう!」と母親。
妹を叱った後「さあ復習です。なんで叩かれたか言ってみましょう」と聞いてきた母親に対し彼女は
「ネギ」
母親はすこし笑いながらも「どうして叩かれたか理由をきいてるの!」
するとボソッとした声で「お姉ちゃんとケンカして…」
その言葉を聞いた瞬間(後に続く言葉を聞く前に)待ってましたとばかり「そうよ、そうでしょう!」と抱きつく母親。
このときこの母親にとって大事だったのは自分が叩いた事への一刻も早いフォローより子どもの言い分をきちんと聞く姿勢だったと思う。ビデオのマイクはしっかり妹の言葉をとらえていた。
「お姉ちゃんとケンカして遊んでたから」
暴力の全面否定は良い事?ケンカして遊ぶというのはネギで叩かれなきゃいけないほどいけないこと?
僕は「兄弟は喧嘩していいんだよ」って子どもらに向けて言ったことがある。
次男は「えっ?」って感じだったんがけど、そうしながら真っ当な関係を築いていくもんだと思っている。
ま、うちの場合5つ離れてるからまともな喧嘩にはならないけどね。
097 大福と晩ご飯とバスケ
夕飯時間近くになって小一次男が大福を食べたいと言い出した。昼のおやつだったんだけど、昼食やおやつのタイミングがうまく合わずとっておいたものだった。
家内は「食べるとご飯が食べられなくなるからダメ」
それでも『今』食べたい彼は引き下がらない。
次男「大福食べたい」
家内「ご飯を食べた後だったらいいよ」
次男「食べた後だとお腹がいっぱいでたべられない」
家内「じゃ、半分だけにしておけば」
次男「半分じゃいやだ」
家内「ご飯を全部食べられるんならいいよ」
次男「ご飯だけでいいの」
家内「『ご飯』じゃなくて『おかず』ね」
次男「むり!嫌いな物しかないかもしれないし。全部は食べられない」
家内「じゃ全部じゃなくていいから」
次男「ご飯を食べた後だとお腹がいっぱいになって食べられない」
その日のメニューは次男の嫌いな物ではなかったのに、『丸ごと一個』を『今』食べたい彼の耳には説明する家内の声は入ってないようで、同じ事を繰り返すばかり。
そこへ部活(バスケ)から中一長男が帰宅。
家内から事情を聞いた彼は、弟のぐずりに「これでも小学生?年少並じゃん」と、最初は気持ちを逆撫でするような言葉をあびせていたものの、 「じゃぁ、ご飯を食べたあと、みんなでバスケをやっておなかを減らして大福を食べる!」
と助け舟。
この言葉に次男もニッコリ。
食事をセーブするどころか、おかわりまでして、とっととすませ、
「おとーさん、はやく食べ終わってね」って言うしまつ。
二日前、僕が20時近くに帰宅すると、家の前の道でバスケットボールをダムダムして遊んでる兄弟の姿があった。家に入ろうとすると僕も誘われたけど遅かった事もあり遊びを中断させてしまったんだけど、楽しかったんなだろうな。兄の言葉が、弟の引くに引けない状況の『落とし所』になったんだろうな。
長男の機転で我が家に平和が戻った。
096 自己満足な指導?
小一次男の授業参観の時です。休み時間に男の子が泣いていた。友達に指をひねられたとのこと。
先生は教卓の前に二人を呼びつけ、加害者トット君(仮名)を被害者ジジ君(仮名)に謝らせた後、ジジ君に対し、叱るように指導をし始めた。
「痛い時は『痛い』って言わないと」とか
「嫌な事をされたら『やめて』って言わないと」とか、
そんな内容だった。
二人から詳しく事情を聞いていたふうではなく、自分が知った情報だけでの対処だったみたい。
トット君ともジジ君とも知り合いだった僕はジジ君に何があったのか聞きにいってみた。
すると「〇×〇×はなんでて言ったらいきなりひねってきた」とのこと。「〇×〇×」が何だったのかはよく聞き取れなかったんだけど、トット君がいきなり暴力に訴えってしまいたくなるような言葉だったのではないだろうかと思った。
ジジ君にしてみれば、悪気はなかったのかもしれないけどいききなり暴力で来たもんだから、もしかしたら聞いてはいけない事だったのかなと思い、言葉を濁したのかもしれない。
悪気があったのならなおさ。
「痛い」とか「やめて」といわなかったのは、『聞いてはいけない事を聞いてしまった反省』があったから?
……な〜んて考えると、先生の指導は更に追い討ちをかける言葉でしかなかったんじゃなかろうか。
いじめの対象にならないために拒絶の言葉を使えるようにするのは大切な事かもしれないけど、この場合はピント外れの指導だったように思えてならなかった。
番外:おかあさんはずるい
子どもの声を拾ったメモの中にこんなのがあった。
シュチュエーションまではメモられてないので、どんな場面だかは忘れてしまったけど、3歳半の次男の言葉。
「おかあさんはずるいんだから
ゆるせないよ
おこってもすきなんだから」
泣きながら訴えてたのか、
怒られた後つぶやいたんだか・・・
本人達、覚えてるかな?
095 呼び水からの『やる気スイッチ』
卒業、卒園シーズンの話。
長男の学校ではクラス毎にクラスメイト全員に向けた一言メッセージを書くというのがあるみたい。夕食時にそのことが話題になった。
「AはBへのメッセージ、僕のを真似たんだよ」
「フーん」
「僕が『あ〜たらこ〜たらは、ど〜たらそ〜たらだ!』って書いたら『なんたらかんたらは、どうしたこうしただ!』って書いてた」と憤慨した様子。
「Cにはアニメの歌詞を書いて、Dには『ど−したこーした』って書いてやった」
「女の子にも書くの?大変だね。Eちゃんにはなんて書いた?」
「うんたら」
「Fちゃんには?」
「ふんたら」
などと話をすすめていると、年長次男が「Gちゃんにお手紙書く」と言い出した。
聞くと、卒園式を目前に引っ越ししてしまうGちゃんへのお手紙という宿題があるとのこと。女の子に対してということで気乗りのしてなかった次男のやる気をくすぐったみたい。
食後の風呂の中では「『あーたら』って書こうかな」「『ど〜たらこ〜たら』なんちゃって」などと言葉探しをしていた。
長男の話がなければこうはならなかったな。
次男を救った長男との会話だった。
094 絵は描くものだと思う
長男が小5の冬休み、絵を描いたからコンピュータに取り込んで年賀状に印刷してくれと言ってきた。
当事『マイブーム』となっていたマンガのキャラクターがとぼけた感じで見事に描かれていた。僕は暫く考えたけど『拒否』。
不満な長男は抗議。ポイントは2つ
「バーチャンには作ってやってるのになんでぇ〜」
「毎年、写真を印刷してくれてるのになんでぇ〜」
確かに、母親に頼まれて息子の描いた干支に因んだ絵を印刷してあげるというのは慣習となっている。
その年のベストショットの写真を息子の年賀状に印刷してるのも事実。
「写真はよくて、絵はだめ」というのが腑に落ちない様子だった。
家内も僕に遠慮しながらも「印刷してあげればいいのにー」と長男寄りの考え。
僕は「そんなもん、一枚一枚描け」と言い
長男は「これ以上上手く描けない」とすがってくる。
僕は「それでも描け!でも、写真なら印刷してやる」
諦めた長男は例年通り写真とラフレイアウトを持ってきたので、印刷してやった。
友達に宛てた息子の年賀状は、印刷された写真にからめながら一枚一枚にキャラクターを描いたものだった。一枚の絵を印刷しただけではこうはならないんじゃないかな。
仕上がったキャラクターは、対象の友達ごとにポーズや台詞が変えられたとても手の込んだ、気持ちのこもったものになっていた。
これを見た家内は「おとーさんはこれを目指していたのね!」と納得してくれた。
めでたしめだたし。
092 小学生だって甘えてもいいと思う
夕方自転車を走らせていると、散歩の途中なのか母親におぶさっている女の子を見かけた。小学3年の顔見知りの子だったので、一瞬声をかけようと思ったが、とっさの判断でそのまま通り過ぎた。
というのも……
(回想)
幼稚園で同じバス停の友達と遊ぶ約束をした次男(年長)は、このまま遊びに行っていいかと聞いてきた。お迎えに来ていた相手のお母さんにお伺いをたてたところ、どうも都合が悪いらしい。
それでも子ども達の懇願に負けてなんとかしてもらえることになり、次男は家に帰らず、そのまま相手方へと向かった。
一人で家に帰りついた僕は先方に対し申し訳ないという気持ちが残り、都合が悪くなると聞いていた時刻前には迎えに行こうと思っていたのだった。そんなとき、ドアがあいて次男が帰ってきた。
途中でみつけたカマキリを入れる虫カゴをとりに帰ってきただけだったらしいんだけど、僕はいいタイミングと思い「今日はもうやめにしよう」と言ってしまったものだから大変。突然の遊び中止勧告に泣き出してしまった。
前言撤回の反省もあり中止を中止することにしたんだけど、一旦泣き出した彼は泣き止む事が出来ず、パニックは続いた。
何を言っても…
「顔があかくなって(泣いてる事が)ばれちゃう〜」
「どーしたら泣きやめるの〜」
「早く泣きやまさせてよ〜」
「顔があかくてはずかしい〜」
「早くしないと時間が無くなっちゃう〜〜」といった調子。
それでも何とか「ゆっくり歩いて行けば向こうにつくウチに落ち着くよ」となだめすかし、ダッコの状態で出発した。
ところが、何メートルも行かないうちに、いつもよくしてくれる近所のおじいさんが、からかい半分にあやす様子で
「あ〜かちゃん」「あ〜かちゃん」「あ〜かちゃん」と言いながら近付いて来た。
『チッ!』ってなもんだ。
せっかく取り戻していた落ち着きがパ〜。
次男は僕から降り泣きながら歩いて家に戻ってしまった。家の中では「じいちゃんがとどめをつけた〜〜〜〜」「時間が無くなる〜〜」パニックの再開。これぞ『振り出しに戻る』。
5分程の『一回休み』が入り、再スタート。今度はなんとかたどり着けたのだった。
何年生になろうと甘えたい瞬間はあると思う。でもそんな姿は知り合いには見られたくないんじゃないかな。僕は子どもには気安く声を掛けてしまうタイプ。僕が思う程深刻な場面ではなかったのかもしれないけど、悪気のない一言も時と場合を選ばなければと思わされた。
091 掃除は嫌いらしい
男の子に限った事とも思えないけど、我が家の兄弟は激しい遊びが好き。普段は6歳離れた次男を遊び相手として認めない長男も風船を使ったバレーボールやドッヂボールになると一緒になって遊んでる。それは親としては嬉しい事なんだけど、場所が畳の部屋だったりするもんだから困ってしまう。
あまりにも磨耗が激しくなってきたので子ども達にミッションを与える事にした。
「遊んだ後は掃除機をかけといてね」
すると子ども達はいやいやながらにも掃除をするようになった。
その後も同じミッションを繰り返しているうちに頻度が減り、とうとうやらなくなってしまった。
それはそれで困った話ではあるのだが………………。
我が家では仕事部屋と子供部屋が隣あってはいるものの引き戸で仕切られているだけ。僕の「子どもは閉ざされた空間においてはいけない」との方針の元、その引き戸は開けっ放し。仕事部屋も子ども部屋も廊下に面するドアも開け放し。
成長してきた長男はそういった環境がイヤになったらしく、5年生当たりから『独立した部屋』を要求してきた。6年のある日、真顔で「部屋のドアは閉める習慣にしたい!」と言ってきたので、条件を出した。
「掃除は自分達でやってくれ」
すると長男は……あっさりとひきさがった。