夕方自転車を走らせていると、散歩の途中なのか母親におぶさっている女の子を見かけた。小学3年の顔見知りの子だったので、一瞬声をかけようと思ったが、とっさの判断でそのまま通り過ぎた。
というのも……
(回想)
幼稚園で同じバス停の友達と遊ぶ約束をした次男(年長)は、このまま遊びに行っていいかと聞いてきた。お迎えに来ていた相手のお母さんにお伺いをたてたところ、どうも都合が悪いらしい。
それでも子ども達の懇願に負けてなんとかしてもらえることになり、次男は家に帰らず、そのまま相手方へと向かった。
一人で家に帰りついた僕は先方に対し申し訳ないという気持ちが残り、都合が悪くなると聞いていた時刻前には迎えに行こうと思っていたのだった。そんなとき、ドアがあいて次男が帰ってきた。
途中でみつけたカマキリを入れる虫カゴをとりに帰ってきただけだったらしいんだけど、僕はいいタイミングと思い「今日はもうやめにしよう」と言ってしまったものだから大変。突然の遊び中止勧告に泣き出してしまった。
前言撤回の反省もあり中止を中止することにしたんだけど、一旦泣き出した彼は泣き止む事が出来ず、パニックは続いた。
何を言っても…
「顔があかくなって(泣いてる事が)ばれちゃう〜」
「どーしたら泣きやめるの〜」
「早く泣きやまさせてよ〜」
「顔があかくてはずかしい〜」
「早くしないと時間が無くなっちゃう〜〜」といった調子。
それでも何とか「ゆっくり歩いて行けば向こうにつくウチに落ち着くよ」となだめすかし、ダッコの状態で出発した。
ところが、何メートルも行かないうちに、いつもよくしてくれる近所のおじいさんが、からかい半分にあやす様子で
「あ〜かちゃん」「あ〜かちゃん」「あ〜かちゃん」と言いながら近付いて来た。
『チッ!』ってなもんだ。
せっかく取り戻していた落ち着きがパ〜。
次男は僕から降り泣きながら歩いて家に戻ってしまった。家の中では「じいちゃんがとどめをつけた〜〜〜〜」「時間が無くなる〜〜」パニックの再開。これぞ『振り出しに戻る』。
5分程の『一回休み』が入り、再スタート。今度はなんとかたどり着けたのだった。
何年生になろうと甘えたい瞬間はあると思う。でもそんな姿は知り合いには見られたくないんじゃないかな。僕は子どもには気安く声を掛けてしまうタイプ。僕が思う程深刻な場面ではなかったのかもしれないけど、悪気のない一言も時と場合を選ばなければと思わされた。
ダンボールに描いたドラゴン